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来ないかもしれない。来ても振られるだろう。
仲間を喚んで笑い者にされることも捨てきれない。
しかし、そんなものがなんだろう。思いを伝えられないことの歯がゆさに比べれば、どうということはない。はずだ。
待っている間も私の心臓は鼓動を速める。喉を大きく鳴らした。
影が現れた。
彼だ!
すぐに理解した。
「どこですかー?」
彼は来てくれたのだ。私の呼びかけに。私は勇気を持って、一歩前に踏み出した。
「七……瀬?」
「そうだけど」
彼は私を覚えていてくれてるだろうか? 名前を見て、女だと思って来ていないだろうか?
そして現実を見て落胆しているのではないだろうか?
彼が口を開いた。
「宮藤は……やっぱお前か」
「うん」
茶みがかった髪をくしゃくしゃとかきあげる。
かきあげた後、彼は照れながら笑ったようにみえた。
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