『 アコ 』

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   校内の木々も色彩豊かに染まっている。すっかり、秋。 風で少し位置のずれたヘッドドレスを直し、スカァトのしわをはたいた。  アコー上野 朝子(うえの あさこ)―から、授業が終わった、とメールが着たので、直ぐ其方に向かう、と返事をした。 いつも通り、図書館の前で待ち合わせになった。  「クサハラ君、ヤヨに気があるんじゃないの?」  ヤヨー水瀬 弥生(みなせ やよい)―とは私の事だ。 アコは長い栗色の巻き毛を、優雅に風なびかせながら、興味津々といった様子で云った。  「アイツが?やめてよね」  「だって、どう考えたってそうに違いないじゃない」  図書館を出入りする生徒達を横目に、木陰のベンチに肩を並べて座った。  「アイツは私の格好を笑いたいのよ」  
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