五章・引っ越しです。

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  「有希…眼鏡掛けてくれ。」 有希を背中で隠すように移動しながら小声で話し掛けた。 「あぁっ、そういうことね♪ 了解了解~♪」 俺の後ろで鞄をガサゴソと漁り眼鏡を掛けた。 ふぅ…。 これで、とりあえずは大丈夫だろ…多分。 「えっと…鈴本くん、紹介してくれるかな?」 手に持っていた段ボールを地面に置くと小首を傾げながら俺を見た。 「私は中野有希でーす♪ 隣は私の知り合いの田中さん♪」 背中からピョコッと顔を出す眼鏡を掛けた有希。 「あっ僕は木山麻衣だよ♪ よろしくお願いします♪」 「あはは♪ よろしくね~♪」 挨拶を終えた有希は満面の笑みで美雨達の元に走っていった。 んっ…気付かれてないみたいだな。 良かった良かった。 トントンッ。 誰かが俺の肩を叩いた。 振り返ると寂しそうな顔をしたジョニーが立っていた。 「なぁ鈴本…僕の紹介はないのかい…?」 「あっ忘れてた。 すまんすまん。」 って泣くな泣くな。 紹介してやるから。 「で、店長。 この隣の奴は…知らない人です。」 「鈴本ぉぉぉぉッ!?」 うるさいぞジョニー。 近所迷惑だ。 「あはは…君もよろしく♪ 頑張ろうね♪」 店長はジョニーを見るとニコッと笑いかけた。 「あっ…よ…よろしく頼むよ。」 ジョニーは照れ臭そうに顔を背けると、そのままトラックの裏に歩いていった。  
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