五章・引っ越しです。

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  「ご主人様♪ 家が空っぽになったのです♪」 「今すぐ必要な物はコウの車に積んだわよ。」 作業を終えた二人がトコトコッと俺達の元に駆け寄ってきた。 「おぉ本当か。 どれどれ…。」 我が家はどんな状態になってるのかね。 家主が確認してやろう。 頬を伝う汗を首のタオルで拭いながら二人と家に入った。 「うわぁ…本当に空っぽだな…。」 家具一つない部屋はシーンッと静まり返っている。 壁に残る家具の跡が、ここでの思い出を蘇らせた。 「何だか寂しいのです…。」 「出会った場所が家だったもんな…。」 空っぽになると、こう…ジンワリとくる寂しさがあるな。 「何をシンミリしてるのよ二人共。」 弥生は部屋を見ている俺と美雨の間にグイッと体を差し込んだ。 「また新しい家で思い出を作ればいいじゃない。 それに、ここでの思い出だって消えないわよ。」 あぁ…そうだな。 思い出が消えるわけじゃないよな。 「次からは…私も一緒に思い出作るんだからね♪」 「んっ…沢山、新しい思い出作ろうな。」 「はぃなのです! あっ…そうなのです。」 美雨は俺達の手を引いてトコトコッと玄関から出ると方向転換して家を見た。 んん~? 美雨、何するんだ? 「すぅ~…今まで本当にありがとうなのです~ッ!」 息を深く吸い込むと家に向かって大声で叫んだ。 そして小さくお辞儀をしてからニコッと俺を見る。 「えへへ♪ これでOKなのです♪」 ふふっ…美雨らしいな。 家も喜んでるかもしれんな? 「それじゃ行くか。 早く引っ越し終わらせなきゃな。」 「そうね♪」  
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