五章・引っ越しです。

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  ━━━━…。 「鈴本くんの馬鹿ッ! ズルイよ自分ばっかりッ!」 有希と友達だったことを知った店長は頬をプクッと膨らまして俺を睨む。 ズルイって言われても…。 アイドルの友達でも特に得はしませんよ。 「店長さん騙してごめんね…?」 「えッ!? いやYuNow様と会えただけで僕は幸せですッ!」 この格差…何なんだろう。 馬鹿とかズルイとか言われた俺は惨めだ。 「あれ? ってことは…YuNow様にサインCD貰ったのって…。」 「公平くんに頼まれたんです♪ 店長さんにあげたいって♪」 頼みましたっけ。 「鈴本くん…給料上げとく! 僕、感動で涙が出そうだよ!」 店長は満面の笑みで俺の手を握ってブンブンッと振った。 おぉ…減らされそうだった給料が増えた。 何というYuNowパワー…ッ! 「有希…サンキューな。」 俺は隣に座る有希の耳元でボソッと小声で言った。 「んーん♪ じゃ今日の晩御飯はお母さんと私の分もよろしくね♪」 はいはい。 お安いご用ですよ。 「でもYuNow様が僕の目の前に居るなんて…夢みたい…。」 「いつも応援ありがとうございます♪」 有希は夢心地な店長の腰掛けるソファーに座った。 「わわッ! YuNow様…近いですッ…。」 「え~? じゃ、もっと近付いちゃおっかな♪」 ピッタリと隣にくっつく有希を見ながら真っ赤な顔をする店長。 店長が嬉しそうな顔するのは分かる。 だが、その有希の満足げな顔は何なんだ。  
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