六章・とある猫達の一日。

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  「ふにゃ…痛かったのです…。 やっぱり意地悪なのですッ!」 「美雨が悪いんでしょ? 自業自得よ。」 頬を押さえて涙目で私は睨む美雨の頭をポンッと叩いて私はUFOキャッチャーに向かった。 あっ…これテレビで見たことあるわ。 確かアニメのキャラクターよね? 「一回だけやってみようかな…美雨は…って、あれ?」 後ろを見ると付いてきていると思っていた美雨の姿がなかった。 まったく…イジケてるからって居なくならないで━━ 『さ…触らないでなのですッ!』 少し離れた所からゲームの雑音に混ざって美雨の叫び声が聞こえた。 「美雨ッ!?」 私は声が聞こえた方に全速力で走って向かった。 そこにはガラの悪い三人組に腕を捕まれる美雨が居た。 「姉ちゃん、これ猫耳って奴? コスプレか?」 「嫌なのですッ…手を離してなのですよッ!」 美雨は必死に暴れて逃げようとしていた。 けど男に相当な力で捕まれてるみたいで無駄だった。 「一人なら俺達と遊ぼうぜ~? 君、可愛いし。」 「嫌ッ…。」 腕を掴んだ不良が引き寄せた美雨の腰に手を回した。 ったく…美雨に何してるのかしらコイツ。 これって正当防衛…よね? ドスッ! 「痛ッ! チッ…んだコラッ!」 私は不良の背中に回し蹴りを放った。 怯んだ不良が手をパッと離すと隙を見て美雨は私の元に走って来た。 「この子、私の連れなの。 何してくれちゃってるわけ?」 美雨に何かあったら困るのよ。 私の大切な家族なんだから。 「ハッ…女か。 君みたいな気の強い女の子、好きだぜ?」 気が付くと私達の周りを不良が取り囲んでいた。 三人…か。 ちょっと不利ね。 私は横目で美雨を見て小さな声で話し掛けた。 「美雨…走れる? ここは逃げるわよ。」 「はぃなのです! 弥生ちゃんと一緒なら大丈夫なのです!」 そう…頼られてるのね私。 まぁアンタは必ず守るわよ。 『いち、にの、さん』の合図で私達は不良の間を通り抜け走ってゲームセンターから飛び出した。  
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