六章・とある猫達の一日。

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  「そういえば、これは誰の車なの?」 助手席の私は車内をキョロキョロと見渡しながら麻衣さんに話し掛けた。 見た目は田中さんの車みたいな感じね。 コウのスポーツカーとは違って広いわ。 「ん~? 僕の愛車だよ♪」 「麻衣さんの車も凄いわね…。」 って、どうしてこんなにうるさいのかしら…。 コウの車と同じくらいうるさいわ…。 「そうかな? 鈴本くんの車の方が凄いんだよ?」 信号で停まると麻衣さんは私の前にある収納をガシャッと開けてファイルを取り出した。 「ほらっ、これ。 イベントで優勝した時の写真だよ。」 麻衣さんが開いたページを見るとコウがトロフィーを持って車と映ってる写真が貼ってあった。 「わぁ♪ ご主人様カッコイイのです♪」 「コウも凄いのね…。」 確かに他の車とは大分、違う感じはしてたけど。 でも私にはよく分からないわ。 「一時期は仕事の休憩時間にも、ずーっと車を触ってたんだよ。」 信号が青になり車は轟音を上げながら、ゆっくりと走り出す。 「何でかって聞くと『乗せてやりたい奴らが居るから』って言ったのは未だに謎だけどね♪」 えっ…? 「それって…いつの話…?」 「んーっと…一年前かな? 今は鈴本くんの車も大人しくなったね♪」 麻衣さんは片手をハンドルに乗せて、もう片方の手で顎を撫でながら首を傾げた。 もしかして…私達? コウは私達を乗せたかったの…? 「えへへ…ご主人様の秘密を聞いちゃったのです…。」 後ろに座る美雨はニヤニヤしながら私の顔を見ていた。 やっぱり美雨も気付いたわね。 多分そういうことだと思うわよ。  
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