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━━━━…。
カーテンの間から見える灰色の空。
外を見るとザーザーッと雨粒がアスファルトに吸い込まれていく景色が見えた。
「ゴホゴホッ…朝か…。」
体が痛い…筋肉痛の痛さじゃなくて風邪の痛さだな。
さてと…仕事だ…。
重い体に鞭を打ちベッドから降りようとすると何かに服を捕まれた。
「どこに行くのですか…?」
それは目をトローンとさせながら俺の服を掴む美雨だった。
ベッドに乗せた腕を枕にするような体制で床に座っていた。
「お前…ゴホッ。 ずっと、そこに居たのか…?」
「ふぁ~…はいなのです。 夜中から、ずっと居たのです。」
立ち上がった美雨は腕をグーッと伸ばしながらベッドに腰掛けた。
「お水飲みたいのですか? それともお腹空いたのですか?」
美雨は俺の額に自分の額を当てると『熱が少しあるのです…』と呟いた。
「いや仕事行くから着替━━」
「もう麻衣さんに休むと伝えたのです。」
少し怒ったように俺をキッと睨みつける美雨。
こんな冷たく俺を見る美雨は今まで見たことがなかった。
「お仕事になんて行かせるわけがないのです。 絶対に…。」
美雨…。
「いつも無理ばっかりッ…少しは自分を大切にしてなのですッ…。」
そう言って美雨は俺の胸に飛び込んできた。
胸をポカポカッと叩きながら『ご主人様のバカ』と何度も繰り返した。
そうか…。
自分だけが良いって思っててもダメなんだな…。
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