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「気にするな。 美雨は美雨のままで居てくれ…。」
よしっOK。
綺麗になったぞ。
「ふにゃ…? よく分からないけど分かったのです!」
美雨はニカッと八重歯を見せながら笑うとハラハラ落ちてくる桜を見詰めていた。
「じゃ入口で止まってても仕方ないし奥に行ってみるか?」
桜祭りなんだし何か食べながら回りたいよな。
「奥も桜でいっぱいだったのです!」
「そうなの? それは楽しみね。」
弥生の手を引いて奥へ奥へと進む美雨。
弥生も何だかんだ楽しそうで少し安心した。
「あっ、あれは何してるのですか?」
奥に進んだ俺達は沢山の人達が集まっている大きな広場に着いた。
楽しそうに歌う声が聞こえる。
「んっ…カラオケ大会みたいだな。」
「歌って踊ってるわね。」
弥生って、そのワードが好きなのか?
いつも言ってる気がするぞ。
「ねぇコウ? 次に出てくる人ってさ…。」
ふと舞台に目をやると明らかに見覚えがある後ろ姿。
あのお坊ちゃまの姿が見えた。
「あれってジョニーよね…?」
「あぁ…ジョニーだな。」
「わたしも歌いたいのです~♪」
美雨は有希の曲くらいしか歌えないだろ?
いや上手なんだけどな。
『三十番、杉田 健。 愛のメモリーを歌います。』
あ…愛のメモリー…?
あの黒い人の曲か…?
観客がシーンッと静まり返るとBGMが流れ始める。
ジョニーは深く息を吸い込み一気に吐き出すように声を張り上げた。
『うぅぅぅぅつぅぅぅぅ…くしい人生よぉぉぉぉッ!』
うわぁ…腹立つ。
物凄い腹立つ。
「よし…とりあえず出店でも見に行くか。 ってか行こう。」
ここに居てアイツに見付かったら面倒だからな。
それに呼び掛けられたら人生の終わりだ。
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