八章・桜祭りなんです。

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  「ほらっ立って? 体中、桜まみれよ主人様。」 有希は自分の体を見て『あっ本当だ』と苦笑いしながら立ち上がった。 「私が取ってあげるわよ。」 「弥生は優しいね♪ ありがと━━」 バッチーンッ! 「あぅッ! ひぐッ! ぶふッ! 痛いよッ!?」 弥生は無表情のまま桜まみれの有希の顔を平手打ち。 しかも何発も。 「主人様だけじゃないわ。 叩いた私は心が痛いのよ…。」 頬を押さえながら怒る有希に申し訳なさそうに上目遣いで呟いた。 ちょっと待て。 さっきも同じような光景を見た気がするぞ。 「そっか…そうだよね。 ありがと弥生♪」 「ふふっ…どういたしまして。」 やっぱり人間って知らない方が幸せなこともあるんだな。 お前は幸せ者だぞ有希。 「ユノー…?」 小さな声が聞こえた。 見てみると小百合ちゃんがションボリとしながら歩いてきていた。 「あっ、お帰りなさい小百合ちゃん♪ って目が赤いよ…?」 泣いた後なのか小百合ちゃんの目は真っ赤に腫れ上がっていた。 「あのね、そろそろ帰るよってパパとママがね、言ってたの。」 まだ帰りたくないんだな。 でも納得してきたんだから偉いよ。  「だからね、ユノーのサインちょうだい…?」 小さな手は、ただのメモ帳を一冊だけ握り締めていた。 それを遠慮がちに有希に手渡す。 「ふふっ…もちろん良いよ♪ 最高のサイン書いちゃう♪」 有希は嫌な顔一つせず慣れた手付きでサラサラッと自分のサインを書いた。 「はいっ♪ 大切にしてね♪」 良い奴だよ有希は。 そういう所は本当に昔から変わらないな。 「わぁ! 凄い! ユノーありがと!」 「良いってことよ♪ またどこかで会おうね小百合ちゃん♪」 メモ帳を渡した有希は小百合ちゃんに掌を向けてニッコリと微笑んだ。 「うん! またね!」 パチンッ! 有希の意図がしっかりと分かったのか掌に自分の掌を当てハイタッチした。 「小百合ね、ユノー大好きだよ! 頑張ってね!」 嬉しそうに、そう叫ぶとサインの書かれたメモ帳を大切そうに抱えて走っていった。  
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