九章・暑い日に見た夢。

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  ━━━━…。 「イタタタッ…まさか頭突きされるとはな…。」 フラフラとよろめきながら美雨に頭突きされた額を軽く撫でて周りを見渡した。 「んで、ここはどこだ? 確か美雨のおかげで眠って…。」 あぁ、これは夢か。 こんな冷静な気持ちで夢を見るのは初めてかも。 「えっと…ここは前に住んでた家の近くにある商店街か?」 周りはぼんやりとモヤが掛かったように見える。 でも確かに見覚えの商店街だった。 「あっ、この店…美雨と出会った後くらいに潰れたんだよな。」 ってことは三年くらい前の商店街? 懐かしいな…。 キョロキョロと懐かしい景色を見渡しながら歩き回った。 すると一軒の魚屋が目に付いた。 「ん…? あの猫、何やってんだ?」 猫が魚屋の前をウロウロしていた。 店の様子を伺うように行ったり来たりとしてる。 「おーい…猫。 お前は何してるんだ?」 近付いて見ると猫は綺麗なグレーの毛をしていた。 そしてスラッと美しいスタイルから美人な猫に見える。 「もしかして魚が欲しいのか…?」 「にゃあ。」 そうかい。 仕方ねぇな…。 「オジサン、アジ一匹だけ売ってくれ。」 俺はポケットに入っていた財布から小銭を取り出してアジと引き換えに渡した。  
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