一章・帰ってきたッ!?

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  「な…何で体当たりッ!? ってか、どちら様ですかッ!?」 く…苦しいッ…。 首、絞まってるから離してくれると嬉しいなッ…。 「えっ? わたしが誰だか分からないのですか…?」 特徴的な色の長い髪を靡かせる女性は俺の服からパッと手を離した。 グレーの艶やかな髪…。 少し垂れてる瞳…。 「もう…わたしが分からないなんて困ったご主人様なのです。」 女性は、はぁ…、と溜め息を吐くと急に光に包まれた。 それは俺も見たことがある懐かしい光だった。 ポンッ! 「ただいまなのですよ、わたしの大切なご主人様。」 聞き覚えのある音が聞こえると光が少しずつ和らぐ。 そこには優しく微笑む見覚えのある笑顔があった。 灰色の…猫耳。 長くて真っ直ぐな尻尾…。 「まさか美雨…なのか…? お前、美雨なのか?」 「やっと分かったのですか? 遅いのですッ!」 呆れたように俺を見る美雨の猫耳はピコピコッと嬉しそうに動いていた。 み…う…。 本当にお前、美雨なのか…。 「二年振りなのです! ご主人様、元気でしたにゃふッ!?」 俺は思わず美雨を見詰めたまま一瞬だけ止まる。 そして勝手に手を動き、小さな体をキツく抱きしめていた。 「美雨ッ…二年もどこに行ってたんだよッ…。」 「えへへ…ちょっとだけ遠くに行ってたのですよ。」 久し振りに見た俺の愛猫は面影を残しながらも大人っぽくなっていた。  
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