一章・帰ってきたッ!?

4/52
前へ
/374ページ
次へ
  「元気だったか…? ちゃんと飯、食ってたか…?」 抱きしめた美雨の艶やかな髪に顔を埋めながら耳元で小さく呟いた。 「もちろんなのです…ねっ? こっちに来てなのですよ!」 そう言った美雨はチラッと後ろに振り返った。 後ろに居る女性はそれに気が付き、美雨の横に並んだ。 「久し振りね、コウ。 少し身長、伸びたんじゃない?」 肩に掛かる程度の長さで栗色の明るい髪。 一目で分かるスタイルの良さに吊り気味の瞳。 「もしかして…弥生…なのか?」 「私の事も分からないの? 全く…ダメダメじゃない。」 弥生は額に手を当て溜め息を吐いてから俺の手をギュッと握った。 「約束通り…美雨のこと、しっかり守ったからね。」 弥生…本当に弥生だ。 俺とした約束を律儀に覚えてるなんてコイツらしいな。 俺は握った弥生の手をグッと引っ張って腕で美雨と同じようにキツく抱きしめた。 「ありがとう…弥生、本当にありがとな…。」 「馬鹿ッ…恥ずかしいから離しなさいってばッ…。」 顔を背けた弥生は耳を真っ赤にさせながら俺の腕から逃げ出した。 「と…とにかく家に入りましょ! 寒くて死んじゃうわ!」 そう言った弥生はそそくさと玄関に向かって早足で歩いていった。 「弥生ちゃん、照れてるのです…可愛いのです!」 「ふふっ…そうだな。 ほらっ、寒いから入るぞ。」 『はいなのです!』と俺の手を掴んだ美雨は嬉しそうにスキップしながら玄関に向かった。  
/374ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1496人が本棚に入れています
本棚に追加