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「ほんとか、ほんとか」
兄貴は、頭を上げて、ユリナの手を両手で強く握った。
「うん、任せて、防弾スーツと特殊警棒たのんだよ」
「OK、OK、拳銃も用意しようか」
「もう、拳銃は無理だろう。コハナさんにいかれちゃ駄目。恋の奴隷になってしまうよ」
「わかった。ユリナの言うとおりにするから、絶対に頼んだぞ」
ユリナは大きく頷いた。
「旦那様、夕飯出来ました」
婆やがトボトボと腰を少し曲げて、リビングにやってきた。
「あっ、婆や今日は顔色いいね」
「お嬢様、分かります。今日、病院に行くので、お化粧をしたのですよ」
「病院行くときは、化粧しては駄目でしょう」
「男前の先生から、手を握られるのが楽しみで……うふふふ」
「もう、病院に何しにいってんの。お腹すいた。兄貴、アラン君ごはん食べよ!」
「おう!」
食堂では、爺やが魚を焼いていた。煙がモク、モクと食堂に充満している。
「爺や!煙!換気扇!」
ユリナが叫んで換気扇のスイッチを押した。
「けむり?換気扇?」
「煙だらけで何も見えないでしょう!」
「見えない?白内障で霧がかかっていたと思ってました」
「もう、だめだ。で、魚焼けたの?」
ユリナは恐る恐る、網の上の魚を見る。
真っ黒い物体があるだけで、魚の形をとどめてない。
「爺や、魚が炭になっている。今日のおかずが……」
「これ、魚じゃないですよ。肉を網焼きにしているのですよ。これ、テレビの料理番組でやってました。肉の炭焼きと言ってました」
「爺や、勘違いしすぎ、炭焼きとは炭で肉を焼くの!肉を炭にするんじゃないの!」
「はははは、大きな勘違いしてました。どうも"炭"ません」
「もう!冗談言っている場合じゃあないでしょう。お腹すいているのよ」
兄貴はもうあきらめて、レトルトカレーを三つ電子レンジにかけている。
爺やは、肉をまな板に載せて炭化した肉の表面をそぎ落として、包丁でゴリゴリっと切っている。
「お嬢様、中はこんがりと焼けてますよ」
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