少女A

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彼女は、言えば美人だった。 しかし目元まで伸ばした長い前髪と、左手の人差し指と親指で作った輪を左目の前に装備した格好のせいで、美人という認識より先に別の印象を抱く。 男子高生やサラリーマンの目に彼女がどう写ったか、想像するのは容易い。 おまけに言うと、彼女は満面の笑みを浮かべていた。 それは絵に描いたような「いい笑顔」だ。 たまにの表情であったならば愛くるしいことこの上なく、一体何人の異性がこの笑顔に打ちのめされたかもわからない。 けれど常にこの笑みを浮かべているなら話は別だ。 別に今日が彼女の誕生日でもなければ、テストで良い点を取った訳でもなく、万札を拾った訳でもない。 彼女の「いい笑顔」にこれといった原因はなく、「いい笑顔」というよりは「謎の笑顔」だった。 そして、それが彼女だった。 そんな彼女の名前は仮にA子とする。  
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