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小さな決意を胸に抱き社長室のドアをノックした
どうぞーとドアの向こうから返事が返ってき、ドアノブを軽くひねって中に入った
「社長…あの、お話があって来ました……」
下を見ながら呟いた
「まーそこ座り。紅茶入れたる」
高そうなソファーを指差し、誘導した
シーンと静まる
そして、沈黙を破るかのように、唐突に
「もう、無理なんか??」
ハンコを持ったまま手が固まった
残念そうな瞳
まだ、何か言い足そうとしている唇
眉毛を軽く下げている社長はどこか悲しげだ
瞳が合わせられなくなった
「ここに来たちゅーことは、それなりの決意持って来たんやろーなー」
小さく頷く
「社長の気持ち嬉しかったです。……でも、もう…。」
不意に涙が溢れてき、頬を濡らした
モデル事務所に入って3ヶ月
楽しかったこともあった。けど、嫌なことは2倍あった
誰にも言えず溜め込んでいた感情が苦しみが涙となって溢れ出てきた
社長は隣に座り肩を抱いた
「さおり、あんたは頑張ったよ。辛いのに必死こいて笑ってさ…大丈夫やから。もう、今までの涙流しー。スッキリするでー」
鼻を啜り啜り、社長の胸で泣いた
「うっ……う…」
10分ほど泣いた後だった
「荷物まとめてきー。向こう送っとくさかい……明日からもう、あっちの事務所で働いてもらうで。地図はFaxで送っとくしな。……自信もちや。さおり、あんたはあんたや…他のモデルの子達にも明日言っとくから、こっちのことは何も心配しんでいいからな」
背中を優しく摩る
「社長、ありがとうございました」
深く頭を下げ、ドアを閉めた
目は赤く染まっていた
最後になるかもしれない
この景色……
あの、落書き……
すべてを名残よく触っては眺めた
風が吹きつけてきた
「……つっ…!!」
今までの思い出が悩内に吹き荒れてきた
「ありがとうございました」
3ヶ月世話になったロッカー
いつか、別のモデルの子のロッカーになる
そう思うと、ちょっぴり切なかった
その後、振り返らず、家に帰った
頑張るんだ!!
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