報告

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前日、総攻めを宣言した勝家だったが、日が高く昇ってもそれは行われなかった。 攻撃開始の直前、魚津城より降伏の申入れがあったのである。 それにより早速に軍議が召集されたが、結論はなかなか出なかった。 申し出を受け入れるか否か、意見が真っ二つに分かれて対立したのだ。 受け入れることを是としたのが前田又左衛門利家で、非としたのが、佐々内蔵介成政と佐久間玄蕃允盛政だった。 「敵が我らに降ると申しておるのだから受ければ良いではないか、何故拒絶する道理があろうか!!無駄な血は流さぬに越したことはない」 「甘いぞ又左、奴らは我らに最後まで抗い、落城の寸前になって降伏を申し出るなど武士の風上にも置けぬ行いよ」 「そうで御座います、それにここで奴らを許してしまっては、我らに抗おうとも最後に降伏すれば済むと思う輩が現れ、今後の上杉攻略に支障が出んとも限りませぬ。見せしめの意味も込めて、ここは敢えて受けず、撫で斬りにすべきかと」 どちらの意見も採るべき点があり、勝家は決断を下しかねていた。 その後も論議は続き、勝家はさんざん考えた結果、申し出を受けることにした。 柴田軍の知らせを受けた魚津城は、即座に開城され、織田軍が入った。 残っていた城兵は、故郷に落ちていく者や主君に従う者、そのまま織田軍に従う者などに分かれた。 その晩、利家のもとに昨日派遣したばかりの奥村助右衛門永福が戻った。 あまりに早い帰還に驚いた利家だったが、永富が伴ってきた武井夕庵の報せには更に驚愕した。 「ま、真か!?えぇい、よいわ、永富、夕庵殿、親父殿のもとへ報告へ参ろうぞ」 利家は取り乱しながらも、勝家のもとへと急いだ。
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