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私は今まで何人も人間を殺してきた。
きっと何百ではすまない数だろう。
ずっとただ殺すだけ。
私はそういうものだからだ。
ただ殺すだけで良かった。
だが、いつしか私は疑問を持つようになった。
死に直面した者は誰もが同じことを言う。
「たすけて」
と。
そこに例外はなく、みな同様にそう叫び死んでいった。
そこに例外はないものと思っていた。
だが違った。
その者は穏やかな笑顔で、何も言わずその首を差し出した。
言葉でなくともわかった。この者は死ぬことを恐れてはいないと。
最初の1人は気にならなかった。
だが、2人、3人と同じような人間を殺すうち、私の中にだんだんと疑問が湧いてきたのだ。
何故死を恐れないのか。
そもそもは死を恐れることが疑問だった。
私は今まで自分の仲間が数多く死んでしまったことを知っている。私もいつかそうなるということを知っている。だがそれが当然だと知っていた。だから自分の死に疑問などなかった。
人間が死を恐れることを最初疑問に思ったが、その理由は人間の言葉を聞くうちに悟った。
人間には「悔い」というものがあるようだ。
その「悔い」というものがあると人間は死を恐れるらしい。私に「悔い」というものはない。故に理解出来ないものと割りきった。
だが、その「悔い」がない者が現れ、また疑問が沸き上がった。
悔いがないこと、即ち、死を恐れないこと。
私も死を恐れない。しかし、それは悔いがないからではない。それが当然だからだ。
その違いが、気になった。
今まで人間のことなんて何も気に留めなかった。だが、今は気になって仕方がない。
人間の死に際を大きく変える「悔い」。
私はなぜか、それがとても知りたくなった。
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