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 ……何者だ? 今日の仕事を終え、あとはまた明日を待つばかりの身となった私の前に、見知らぬ者が立っていた。 「……珍しいな。お前のようなものが人間を殺す役割を担っているとは」 そいつは、私の問いに答えず、独り言のようにぶつぶつと呟いている。  悪いか? 私はその者にそう言い返した。 「……いや」 そいつは、まるで暗闇が喋っているかのような声でそれだけ答えた。  ……私に、何か用か? 私は再度問いかける。 「私と共に行く気はないか?」 そいつは、その暗闇より黒く、長いローブのフードの中からそう言葉を紡いだ。  ……なぜ私を? 私はまた、疑問で返す。 「お前に興味がある」 フードの奥、闇で覆われた部分からそいつはそう言った。  私はお前に興味などない 私はそいつにそう答えた。 「それはそうであろうな。お前は私達など見飽きているだろう」 そいつはその白い指を私に当て付けながら続ける。 「しかし、お前は人間に興味があるのではないか?」 そいつはほのめかすように言う。  ……なぜそれを知っている? 「お前が私達を見ていたように、私も、お前を見ていたからだ」 と、淡々と言った。 「どうだ?損はあるまい?」 そいつは更に誘惑混じりの声で言う。  ……いいだろう 私がそう言うと、そいつはすぐに私を手に取り、瞬く間にその場から私と共に消え失せた。
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