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Re:Eine junge Idee01
閑散とした部屋の片隅。
一体いつからそこに居たのか、小さな体を縮こまらせ踞り膝を抱え泣き続ける少年が一人。
顔は良く見えないが蛍光灯から降り注ぐ薄暗い光が触り心地の良さそうなブルネットの猫っ毛を照らしている。
室内に散りばめられた無数のがらくたはただただその泣き声を聞いて黙っていた。顔がへこんでいるブリキの兵隊、生地が黒ずんで片腕がちぎれたテディベア、首がもたげても笑い顔を浮かべる不気味なピエロ。少年のすぐ隣には両目代わりのボタンが解れボロボロになった黒猫のぬいぐるみが横たわって少年を見上げているようだ。
そして、閉じ込められた少年。
彼もまた出口のないこの場所へ落ちてきてしまった『がらくた』らしい。
『…帰りたいのですか?』
何処からともなく聞こえた声に驚いたのか少年は大きく肩を跳ねさせ勢い良く顔を上げた。散々泣き腫らした赤い目尻が不似合いな程に美しいオールドブルーの瞳が揺れる。
『それとも、出口が欲しいのですか』
この出口のない倉庫から。
徐々に距離を詰め寄せてくる声に怯え息を飲みつつも弱々しく首を立てに振る少年は恐る恐る手を上げ、声のする方へその小さな手を伸ばしていく。
だして、
唇ははっきりとそう動いたのに声にはならなかったその三文字。
それでも少年の願いを聞き入れたのかどこからともなく伸びて来た黒い腕が、小柄な少年の体を包み込むように抱き締めていく。
『なら、早くお眠りなさい』
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