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「……ん。よし」
卵、レモンとライム、小麦粉、炭酸水。
ビールに、ラム酒、ブランデーが3種、ウイスキー2種……それに、煙草が3種各2カートンずつ。
チカが抱える紙袋には、それだけの戦利品が詰め込まれていた。
時刻は朝5時。
こんなに早起きするのはいつぶりだろう。
見馴れている筈の薄汚れた煉瓦づくりの街並みが、何処か夢の中のように思えた。
荷物も軽く感じる。機嫌、気分とも上々と言えた。
買い忘れはない。
右手のメモを再確認して頷く。
すると不意に自らの髪からアルコールの気配がした気がして、チカは昨晩のことを思い出した。
昨日は休日であったのも手伝い、店も久しぶりに繁盛していた。
――――いや、『繁盛』なんて生ぬるい。
否、最初に入ったのは常連の顔見知りで――あの人明日も来るとか言ってたような――しばらく店内にも客ひとり店員がふたりと、経営面を無視すれば、まあ平和な状態であった…のだが。
一人二人と徐々に客は増えていった。
次第に埋まってゆくカウンター、次はテーブル、グラスも追い付かなくなってきた…そしてそう、あれはきっかり8時。時計の盤面までありありと思い出せる。
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