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「お姉ちゃん、危ないって。止めとこうよ」
少年は姉の後ろにくっついて、茂みの中を進んでいく。薄暗い森の中。足下は地面から飛び出た木の根のせいで、歩きづらい。どこかでけたたましく鳥が鳴く。――「出ていけ」と、「そうでなければ、身の安全を保証しない」と、脅すように聞こえた。
「何言ってんのよ。こんな程度でビビっちゃ一人前になれないよ」
姉は少年を振り返らず、ずんずん先に進んでいく。進むにつれ、森は騒がしくなってくる。
「お姉ちゃん……」
「大丈夫よ、あんたの通過儀礼なんだから。大したことは起こらないから」
姉はそう宥めるが、少年の不安は募るばかりだった。通過儀礼。少年の、火峰家の男児が10歳になると行われる通過儀礼だった。
「奥まで行って、火峰家に伝わるお宝を持ってくるだけなんだから」
「でも……魔物が出るって、お兄ちゃんが……」
「またそんな脅しを真に受けて……。大丈夫よ。出たってせいぜい、ザコ――」
瞬間、茂みから何かが飛び出してきた。姉にしがみつくが、剥がされて少年はそれの前に出される。
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