火峰家

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「や、やだァ!お姉ちゃん、あれ、本物だよ!」 現れた、魔物。狼型のそれを少年は見て、姉に泣きつくが、彼女は相手にせず背を押す。 「だって通過儀礼よ。ちょっとくらい、痛い目に遭わないと」 「やだ、やだ、やだ!出来ないよ!」 少年が泣きべそをかきながら姉にしがみつく。魔物が襲いかかってきて、姉がため息をついた。 「全く、もう。可愛いんだから。仕方ない」 姉が指を立てて、軽く振った。すると、魔物が何かに弾かれて真横に倒れて転がる。尚も魔物は向かってこようとしたが、姉が一睨みすると威嚇して吠えてから、逃げていった。 「乱。あんた、これじゃ、通過儀礼の意味ないよ?」 弟に――乱に言い、姉は優しく撫でた。 「だって、だって……退魔師になんて……なりたくないもん……」 「あらら。弱虫なのか、優しすぎるのか……。まぁ、いいわ。行きましょ」 乱の手を引き、姉は森の奥へと入っていった。
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