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「退魔師」。
そう呼ばれる存在がある。魔性の存在、悪魔の手先、人の心が生んだ醜物……。それらの総称・魔物を退治したり、魔物の関係した事件を解決する存在こそが、退魔師だ。
そして、火峰乱。
彼の生家の火峰家は代々、退魔師を生業として栄えてきた一族だった。その次期第二十一代目となるのが、彼だった。
そして、同時に乱少年は稀代の弱虫で、誰もが一族の今後を心配するヘタレた性格だった。
「乱、通過儀礼の意味をお前は分かっているのか?」
八重色町という町のド真ん中に位置する、大きな屋敷。木造建築のそこが火峰家の本家だった。広い座敷で乱は正座させられ、その前に厳格な性格の父がいた。
「分かりません……」
父、火峰雁路(ガンジ)に答えてから乱は畳の目を見つめる。
「10歳になった自覚を持ち、火峰家の後継ぎとして一層の修行に励むようにと――」
雁路のお説教が始まり、乱が小さくなっていく。ことあるごとに、乱は叱られる。足が早くも痺れてきて、乱は畳の目を見つめながら時間の経過が早くなるようにと祈る。
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