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「乱、お前……姉貴様にずっと泣きついてたんだって?」
胡座をかいて座り、蒼が笑いながら尋ねる。
「だって……怖かったんだもん……」
「で、人食い植物の魔物はいたか?」
ぶんぶんと首を左右に振る乱。あらかじめ教えられた嘘を真に受けたものの、すっかりそんな魔物はいないのだと学んでいた。
「そうか。また一つ、利口になったな」
「……お兄ちゃんは、通過儀礼やったの?」
足を崩し、痺れた足をさすりながら乱が問う。
「やったさ。退屈で、死にそうだった」
「退屈で……?」
「ああ、あまりにも簡単でな」
それから蒼は乱の頭を撫でて目を細める。
「修行、やるか。火峰流式神術は、難しいぞ」
「……うんっ」
大好きな兄に頷いて、乱は立ち上がった。座ったまま手を出す蒼を見て、兄の手を引っ張って立たせる。
「いいか、乱。普通、式神術っていうのは教えたことしか出来ない、いわば、コンピューターみたいなものなんだけどな――」
廊下を歩きながら、蒼が説明を始める。乱は兄と手を繋いだまま顔を見上げて、話を聞いた。
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