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「お姉ちゃん?お兄ちゃん?イブキ?お父さん?……どこいるの?」
夜中だった。ふと目の覚めた乱が家の中に誰の姿もないのに気付いて、屋敷の中を歩き回っている。姉の部屋も、兄の部屋も、父の部屋も、そして居候兼お手伝いの部屋も覗いたが、いなかった。
「……どうしたんだろ?」
ぽつんと大広間の真ん中で呟く。ふと、昼間に蒼が呼ばれていたことを思い出した。火峰家は名のある退魔師の一族。連日連夜、退魔の依頼が舞い込んでくる。
「裏かなぁ……」
裏、とは屋敷に設けられた仕事の為のスペースだ。いわゆる、裏口だった場所に作ったので裏と呼ばれている。美しい庭園を横切る廊下を歩き、裏へと乱が向かう。
「……!……。……、……!」
誰かの声が聞こえてきて、乱は立ち止まった。扉までは、あと7歩。何か、言い争うような声だった。それも恐ろしい剣幕で。一度だけ見た、恐ろしい魔物と戦う雁路が発していたような、迫力と恐怖と、それらが混じり合ったものが感じられる。
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