火峰家

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「お客さんと揉めてるの、かな……?」 怖いことや、痛いことを嫌う傾向のある乱だが、どうしてだかこの時は好奇心が勝った。恐る恐る、戸口に立ち、少し重い木の扉を開ける。 「雁路様!」 乱の目についたのは、あの厳格な父が居候の青年・イブキに抱えられるところだった。部屋は赤い血で汚れ、外からの入口に見知らぬ男がいた。カウンターを挟んだ向こうに、探していた家族はいたが、全員が乱には背を向け、一人の男を向いていた。 「親父様に、何しやがんだァ……!?」 蒼が動いた。凄みを利かせた声に乱の心臓が跳ね上がり、それ以上に蒼から放たれた光弾に目が眩んだ。薄暗かった室内に光が満ち、直後に男が吹き飛ぶ。 「こんなんじゃ、済まさねェ――!」 「蒼、止めなさい」 止めたのは姉・雪花(セッカ)だった。雪花は火峰家唯一の女性で、乱とは10歳差だ。表向きには大学生として生活しているが、女性ながらに退魔師としては優秀である。
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