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「姉貴!何で――乱、何でいるんだ?」
蒼が乱に気づき、固まる。
「ね、眠れなくて……」
乱が答えた瞬間、何かが弾けた。乱が開けたままだった扉が木っ端微塵に砕け散り、尻餅をつく。
「イブキ、乱連れて逃げろ!」
「えっ……えっ?」
「行きましょう、乱様」
イブキ青年が乱の手を引き、来た廊下を走っていく。戸惑うしか出来ない乱は後ろを何度も振り返った。
「イブキ、何?何が起きてるの?お父さんは……?」
「申し訳ありません。全ては、今を乗り切った後に何卒」
乱の問いに答えず、イブキが屋敷の玄関から外へと出る。懐から小さな巾着袋を出し、それを乱に持たせた。
「乱様、肌身放さず、お持ち下さい。雁路様のお守りです」
「イブキ……教えてよ。何が、起きてるの……?」
「今、申し上げられるのは……雁路様と乱様、つまりは火峰の後継者が、お命を狙われているということです。不肖ではありますが、私が乱様をお守りいたします。さあ、行きま――」
乱の手を引いたイブキだったが、乱がその手を払った。乱の目には恐怖と驚きと不安と、そして、決意が表れていた。
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