第一話  昔話・はじまり

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書斎の扉の前に立っていたユーナは、扉を二三回ノックすると、扉の向こうに居るであろう自身の父親が答えてきた。  「誰だ?」 ただその一言であったものの、その声は、威厳に満ち溢れ、聞くものを圧倒するような低い声であった。  しかし、ユーナはそれ自体は気にする様子もなくカインと話しているときとは、違った声で、ただ無機質な声で返答をする。   「お父様私です。御用があるとの事でしたので参りました。」  すると、なかからまた低い声で、入れ、と返事がありユーナは扉を開けるために、取っ手に白く漉き取った肌の手で金具を掴み扉を開ける。  すると、扉からギッギィーと鈍い重い音がして扉が開く。  中には、彼女の父親である、白いひげを生やした、見ているだけで、その威圧感が感じれるほどの初老の男性がいかにも高そうな執務机に座っていた。  部屋の中は、それほど煌びやかでわなく、シンプルに内装を施された場所であった。  そして椅子に座っている男性こそユーナの父親であり、現聖王一族当主、竜殺しの異名を持つ、ギルバートその人である。  この男性の経歴は、後に語るとして現在ユーナとその父親が対峙しているこの空間は、重圧にも似た異様な空気が漂っている。 ユーナと父親は、仲がよくないのか、お互いににらめ合っている。  その時間としては、数分だったものの異様に長くかんじられた。
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