第一話  昔話・はじまり

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異様な空気に包まれた部屋の中で最初に口をひらいたのは、ユーナの方であった。  「お父様、何用なのでしょうか?」 すると、ギルバートの方は、不敵な笑みで、ユーナに対し口を開いた。  「お前も既にわかっておろう?」 するとユーナは、少し考え再び口を開く。  「婚約の件でしたらお断り申し上げたはずです。」 その声は、今までの無機質な声とは違い、少し心なしか怒気が含んでいた。  この時、聖王一族の一人娘であったユーナは、今年で18となるため、貴族間同士の婚約の話が持ち上がっていた。  この国では、女性が、18になり、婚約をしていないという事自体が非常に珍しく、貴族の娘が婚約していないのは本当ならありえないことであった。  けっしてユーナが不細工だというわけでなく、むしろうつくしいと言うにあたいするユーナが婚約しなかったのは頑なに拒み続けていたためである。 そのため、父親とユーナの関係は決して良好ではなかった。
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