第一話  昔話・はじまり

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 聖王騎士団とは、聖王一族の近衛隊であり、聖王一族ブリューゼル家現党首にしか従わない。  つまり、今は、ギルバートの私設騎士団といっても決して過言ではなかった。  その騎士団が今、ユーナとギルバートしかいない、書斎に入っていくということは、それすなわち、ユーナの身に何かが降りかかろうととしている事に他ならなかった。  その光景を目の当たりにしていた、カインの表情には少なからず焦りの色が見え、他の人から見ても動揺していることが伺えた。  呆然としているカインは扉の向こうで起きている事態の展開に、きずき我に返る。  しかし、時すでに遅く、ユーナは書斎から聖王騎士団男たちに囲まれ出てきた。  その光景を見たカインは、それを止めようとするが、ユーナの異変にきずき思わず言葉を飲み込んでしまう。     ただユーナが連行されていく瞬間をカインは見ていることしかできなかった。  ユーナが連れていかれてからどのくらい時間がたったのか分からないが、カインは、一瞬目を閉じ、少し考えた後、目を開け、我が主君のいる書斎へと足を踏み入れた。  そのときのカインの表情は、今まで見てきたものより、真剣で、顔を見たものは圧倒するのではないかという位威厳に満ち溢れていた。
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