第一話  昔話・はじまり

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 カインが、ギルバートの書斎に訪れてから、数刻の時が過ぎようとしていた。  このときカインは、ギルバートに頼まれた、件で深く思考をめぐらしていた。     カインがギルバートととの話を終えてからギルバートは、カインに対し、自らの考えをまとめる時間を与えてくれたからである。  ギルバートとのやり取りはあの話の後も幾分か続いたものの、話し合うほどに、ギルバートの考え方、思いは覆りそうもないものとしか、結果が出てこなかった。  かと言ってカインも当主である、ギルバートの命令にただ、従うわけにもいかなかった。  それは、仮にギルバートが言っていた、「ユーナに思い人がいる」という話が事実ならば、カインは、ユーナのことも考えなければならぬからである。  カイン自身この数刻の間にどれだけ、ユーナ自身にこの件の真相を聞けたらと何度も考えていた。  だが、実際には聞けずにいた。  それは、ユーナがギルバートの言っていた事を肯定したとき、ユーナにかける言葉が見つからないでいたからだった。    この件で考えていたそのときふと、カインの視線に、自室の机に飾ってある、写真が入った。  この写真には、幼きころの、ユーナ、そしてユーナの隣には、まだ幼さの残るカイン自身が移っていた。    この写真をふと見たカインは、このときの思い出を思い出した・・・
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