第二話 昔話・もうひとつの始まり     

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 沈黙の続く室内には、二人の少年と一人の初老の男性がいる。  男性のほうは、考え事をしているのか、少しうねりながら、目をつぶっている・・・  それに引き換え、少年らの方は頬から一筋の汗が水滴となってたれる。  室内の中は、まるで蒸し風呂の中にいるかのように暑かった・・・  そんな中、男性が口を開く。  少年らは、その男性の行動をひとつ残らずみのがさまいと、集中していたためか、男性が口を開いたその刹那、背筋をこれでもかとはいわんばかりに、思いっきり伸ばす。  「大和と武蔵は、そろそろ、試合が近かったな・・・今からその仕上がりか具合を確認したい・・・ 二人で、今から手合わせをしなさい。」  男性が一息のうちに、少年らにそれを告げると、それを聞いていた少年らは間隔をあけることなく、男性に向け、精一杯の声で返事をする。  その返事を耳にした、男性は、誰かに合図を送るかのように、両手で、二回手を合わせる。  すると男性がいた方角より乾いた音で、パン、パンと鳴り響く・・・  すると廊下の方より複数の人と思しき、足音が聞こえてくる。  それを見ていた少年らは、何がおきたのか理解できなかったのか、父親の御前であるのを忘れ、鳩が豆鉄砲を食らったこのような面持ちに表情をかえた。
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