~召喚~《白翼の少女と黒翼の天使》

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「……」 ドォン…ガラガラ 丘の上から、燃え盛る村を眺めるのはあの紅い目の少女 分厚い本を大事そうに抱え、哀しげな表情で白銀の髪を風になびかせながら、 逃げ惑う人々と、燃え盛る村を哀しげな瞳で見下ろしている 「…お母さん………」 ――――――――― とある世界の名も無き村、 村の外で起きている戦争なんて全く関係ない様子で日々が流れていく 野菜を売るオジサンの声が響くのも、 主婦達が木陰で噂話に花を咲かせるのも、 小さな広場で1人の少女が子供たちから石を投げ付けられるのも、 そこに、少女の母親が来て少女を助けるのも、 それを理由に主人に暴力を振るわれるのも、 全てが日常、この村では当たり前の風景、 「お母さん、私は大丈夫だから…、助けなくて良いから…」 「ルリは気にしなくていいの!ほら、泣かないで?」 泣きそうな声で抱きつく子供の頭を撫でながら 優しく抱き締める姿はまさしく母親、 しかしこの二人に血の繋がりはない、 と言うのも少女、ルリは捨て子であり、 村の入り口にボロ布に包まれ放置されていたのをこの母親、ルナに拾われたのだった 「……ゴメンなさい」 ルリは申し訳なさそうに俯きながら謝る、 此処までの会話もこの村の日常である、 しかし、 日常とはふとした事で簡単に崩れる物、 この村の日常も、突然響き渡った爆音と様々な武器を持った兵士の登場によって崩れていく… 「この村は今、この時を持って我がドリトネルア王国軍の駐屯地とする!直ちにこの村を明け渡せ!」 軍隊の先頭に立つ隊長らしき人物が高らかに宣言する ドリトネルア王国とは、この村の属する国、バラクアが現在交戦中の国である
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