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しかし、
ここで自分が慌てては目の前にいるルリまで混乱してしまう
「さて、そろそろ帰りましょう」
ルナは出来るだけ平静を装ってルリの手を取ると、
家とは反対方向
村の出口に向かって歩きだした
「…お母さん?お家、反対だよ?」
「いいの、魔法を教えてあげる」
不思議そうに歩くルリに
ルナはにっこりと微笑み掛けると歩くペースを上げた
――――――――
「ふぅ、この辺にしましょう」
「…ハァハァ…お母さん……早いよ…」
村の外に広がる森まで出たルナはそこでようやく立ち止まり、
息を切らすルリに目を向ける
「ルリ、ゴメンね…」
ルナは辛そうに謝りながらルリの額に手を乗せると、
呪文を、娘を守る魔法の呪文を紡ぎはじめる
『聖なる風の精霊よ…』
「え?お母さん?魔法は?」
ルリは何も分からないまま
言葉を紡ぐ母を見上げる
『……遥か遠くへ、安らげる地へ』
「お母さん!?」
必死に叫ぶルリを輝く風が包み込む
「ルリ…泣いちゃダメ、笑って?強く生きるのよ…」
泣きながら自分にしがみ付くルリの手をそっと引き離したルナは、震える声で最後の言葉を紡ぐ
『包み、吹き抜け、連れ去り賜え』
「嫌!嫌だよ!お母さん!」
自分を包み込む光の間から
ルリが最期に見たのは、
始めてみる義母の涙と、
その後ろで紅く燃える村を駆け回る人影だった
――――章の最初へ――――
「ッ…お母さん………」
涙を拭い顔を上げた少女ルリは燃える村に、自分を助けた母に背を向け
目の前に広がる森に向かって歩きだした
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