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「…スゥ…スゥ……」
所かわって、これまた違う世界
“天国”“天界”などと呼ばれるこの世界
天使と呼ばれる存在が支配するこの世界には魔法と呼ばれる文化が存在する
そんな世界の森のなか
大きく育った木の上にはスヤスヤと寝息を立てている少年の姿、
その下に立ってそれを見上げる青年の額にはうっすらと青筋が浮かんでいる
「フィードッ!起きろ!」
青年は怒りを抑えながら木の上で眠りこける少年に声をかけるが、
当の本人、フィードが目を覚ます気配はない
「チッ、起きないのが悪いんだからな」
舌打ちの後、青年は言い聞かせるように呟くと、
眠りこけるフィードに右手を向けた、
『フレア』
呟くように唱えた青年の手からは拳ほどの火の玉が、飛び出すようにあらわれ、そのまま一直線にフィードに向かって行った
ピクッ
『風よ』
目を瞑ったままのフィードが呟くと、
まるでそれに応えるかのように風が吹き、
青年の放った火の玉は吹き消してしまった
「…ふわぁ…おはよ、ラウル兄さん…」
何事もなかったかのように目を擦るフィードの仕草は青年ラウルの怒りをどんどん増やしている
「…お前、ミューちゃんとの約束はどうしたんだ?」
「…あ゙…………忘れてた!」
怒りに震えるラウルの言葉を聞いた瞬間
フィードは慌てて木から飛び降りると、叫び声をあげながら走り去って行った
「ったく羨ましいんだよあの野郎!…………………イッツ!」
残されたラウルは、忌々し気に樹を蹴りつけ、蹲る
「………………………帰るか…」
暫くしてから起き上がり、
片足を庇いながら歩くその背中はやけに小さく見えたらしいとか…
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