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「ゆ~うす~けく~ん、しょ~くど~いこ~!」
部屋を出てすぐに、廊下の向こうから聞こえて来たのは、紅葉の声。よく目を凝らして見ると、隣には翠の姿も窺える。
「おーはー、祐介。相変わらず早いわね~」
「おう、おはよう。なに、いつもの事だ」
ニコニコと俺を見ているのが「赤坂紅葉」。元気が服着て歩いていると言っても過言ではないくらいいつも明るく、周りに笑顔を振りまいている。
その隣、頭のカチューシャがトレードマーク、「野山翠」。こいつと俺は中学時代からの馴染みだ。その当時の、唯一の女友達でもある。
ちなみに二人は、色里学園学生寮のルームメイトでもある。
俺を見た二人は、ふとキョロキョロと辺りを見渡した。
「祐介君、茜ちゃんは?」
「そう言えば……今日は部屋に来なかったの?」
二人が疑問に思うのも無理はない。あいつは真っ先に俺の部屋に来るようなやつだからな。
「どうせまだ寝てるんだろう。昨日も遅くまで起きてたみたいだし」
「どうしよう、あたし見てこようか?」
「いや、俺が行って来る。二人は先に食堂行っててくれ」
そう言い残し、俺は茜の部屋に向かった。
*
「おーい、茜? さっさと起きて支度しろ~」
コンコンと、「夕日 茜」と書かれた扉をノックする。
『…………』
しかし返事が無い。
俺はそっと扉を開き……目撃した。
「ん~~、むにゅむにゅ……」
だらしない寝相で爆睡する、茜の姿を……。
パジャマもはだけ、色々とアブナイ……。
「おーい、起きろ~」
取りあえず近づき、軽く体を揺さぶる。
「ん……。私はやってません」
お前は夢で何の疑いをかけられてるんだ?
「おい、起きないと進級早々遅刻だぞ?」
「うぅーん……」
更に揺さぶると、ようやく瞼がうっすらと開いた。
「ん……祐ちゃん……?」
「そうだ。早く起きて支度しろよ」
「うぅ……やだぁ。寝顔見られるの、恥ずかしいぃ……」
「……実の姉弟なのに、何を恥ずかしがってんだか……」
そう。名字も違う、育った家も違うが、茜はれっきとした俺の実の姉……正確には二卵生双生児の姉だ。
とどのつまり、俺達は双子の実の姉弟だ。
まぁ、その話については今は割愛するとして……。
「起きたんなら、早く着替えて支度済ませろ」
「うん……」
「待てぃ! 俺が出て行く前に脱ぐなぁ!」
……早く食堂に行きたい。
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