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机や床に転がる酒瓶やグラス、チェスなどのゲーム類、少し衣服の乱れた若者たち。
それらを見て、ディアは盛大なため息を深く、長く吐いた。
王子と一緒に夜通し騒いでいたらしい貴族どもが顔を青くする。
若者たちの中心に座っていた男だけは面白そうに肩を揺らし、手に持っていたグラスをディアに掲げて見せた。
座っていても、背の高さがそれとわかるほど、体格の良い男である。
鮮やかな青緑色の瞳は笑いの色をにじませ、稲穂のように明るい金髪は結わえることなく下ろされている。
大層見目の良い男ではあったが、残念ながら「バカ王子」とはこの男に向かって発せられた言葉であった。
「魅力的な俺には、花の方から寄ってくるのさ」
「毎度毎度、仰っている意味が分かりません。魅力的も何も、貴方の場合は、たんに酒臭いだけでしょう」
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