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「私こそ、貴女方には相応しくない男ですよ」
「まあ、ディア様ったらいつもそうやってはぐらかす」
「なのに誰とも浮き名は流さないし…」
「今日こそ、私たちの中からディア様の恋人を選んで下さい!」
「一人と言わず、何人でも!」
貴族の子弟たちは「何人でも」の下りに反応するが、王子はニヤニヤと笑って見てるばかり。
「そんなこと、軽々しく仰ってはいけませんよ」
服の裾を掴んでいた滑らかな手を一つずつ外す。
「でも…そうですね。いつか…私だけを見てくれる、生涯たった一人の人を見つけることは、私の夢ですね」
憂いのある声でこたえると、ディアは最後の女性の背中を押した。
ディアの言葉と表情に女性たちが一瞬息を飲んだと同時に、扉は無情にも音を立てて閉じられた。
数秒後、廊下に黄色い悲鳴が響き渡ったが、扉を閉じたディアには知らぬことである。
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