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壮絶な朝から数刻後、新たにできたタンコブを灰色の髪の下に隠し、ディアは城へと出仕した。
ディアが通れば、城を歩く誰もが微笑みを浮かべて挨拶をする。
歩みを止めることなく一々挨拶と会釈を丁寧に返すが、一方のディアは完全な無表情。
それでもこの城の者が気を悪くするようなことはない。
ディアは足早に迷路のような回廊を進み、ある装飾の施された重厚な扉の前に立つ。
ノックをしようと腕を上げたが…その扉の向こうからわずかに香る酒の匂いに気付くと、それまで無表情だった鉄仮面を僅かにしかめた。
そして、上げた腕を下ろすと、ノックもせずにその扉を開け放った。
部屋の中にいた者たちの視線が、ディアに集中する。
視線に怯むことなく、ディアは口を開いた。
「またこんなに散らかして…何度言えば貴方は改めてくれるんですか。脳みそわいてるんじゃないですか?このバカ王子」
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