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ツリーを見上げ、握り合う手がぎこちないが幸せそうに寄り添う一組の男女。
一方は見紛うはずもない、想い続けるあの人。
もう一方は素直で明るそうな可愛い人。
嬉しそうに会話する恋人達は、他の誰が見ても微笑ましいと思うに違いない。
私を除いて、の話だが。
浴槽に飛んで浮かんだ一塊の泡さえも沈む私を嘲笑うかのようだ。
あの人は知っているのかしら。
何故人の命は短いのかを。
天孫・瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が絶世の美女である妹・木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)を選び、共に嫁いだ醜い姉・磐長姫(イワナガヒメ)を追い出したからなのよ。
彼女が妊娠した妹を呪ったの。
お前たちの子など早く死んでしまえ、と。
私もあの人を呪ってしまいそうだわ。
エロスよ、私が次にあの人を目の前にした時、貴方の持つ鉛の矢で私を射ってちょうだい。
もう私は、あの人を黄金の矢で射るようには願わない。
愛と疑いは一緒には住めないから。
いつしか私は、月桂樹のリースが飾られた自室の布団の中で声を殺して泣いていた。
<Fin>
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