呪う月桂樹

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「あのぅ……すいません」 短い爪でやっと紐の先を摘み上げた時。 「“ツリースクエアー”ってここで当ってますか?」 気の弱そうな男性が頭をひょこひょこと頭を下げながらそう尋ねてきた。 「えぇ、そうですよ」 ただ肯定しただけで落胆する男性は、やっぱりと呟いた。 どうかしたのかと尋ねるしかなく口を開こうとするが、先に開いたのは彼の方だった。 「つかぬことを伺いますが、先程怒ったように電話をする女性を見掛けませんでしたか?」 「ショートカットで、活発そうで綺麗な長身の方でしたら……」 「5分位前ですか!?」 「えぇ、すぐに駅の方へ歩いて行かれましたが……」 あぁやっぱりとまた落胆して長嘆息を漏らす男性は、私に力無く礼を述べた。
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