プロローグ

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別に名山の制服に憧れてたわけじゃない。 中学までに培った人間関係を、きれいさっぱり裁ちたかったわけでもない。 同じレベルの奴らに出会って、自分をもっと高められればと、そう淡く期待していただけ。 ただそれだけの選択。 なのに出会ってしまったのは、完成された高雅な逸品。 有り得ないくらいに強靭で、かと思えば儚くて。 信じられないくらい綺麗で、時折妙に逞しくて。 生まれて初めて、手放したくないと思った。 名山を選択したことが自分の人生を変える事になるなんて、この春には気付いてすらいなかった。 頭上よりも地面に桜の花びらが彩りを添える4月。 橘勇也、15歳。 私立名山高校入学式を迎えた、記念すべき朝。 始まりは、ここから。
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