1.出会い

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真新しい制服を着込むのは、多少照れを感じる。 あからさまに新品のスニーカーを履いて歩くのが、やたらこっ恥ずかしいのに似ているかも知れない。 勇也は2階の自室の姿見の前で頭を掻いた。 ま、十分だよね。 着られてる感もないし、1年生に見えないわけでもないし。 1人納得して部屋を出ると、階段の手前で姉とかち合った。 自分を足先から頭まで眺めた後、姉は大袈裟に仰け反った。 「げげっ、あんたそれ名山の制服じゃん!?あんなとこ通うわけぇ!?あんたが妹じゃなくてよかったわぁ。比べられて悲惨だったでしょうね、私の人生は…」 「ていうか理沙姉、俺が名山受かったこと今知ったの?」 凄い時差だよね。ウチの中に日付変更線走ってるわけ? 「弟の高校なんか興味ないも~ん」 「あ、そ」 俺も姉の私生活に興味ないし~。 心からの本音を呟きながら、軽快に階段を降りて行く勇也だった。 のんびりペダルを回転させて、心地良い4月の晴天の街を駅に向かった。 過ぎ行く風の頬への触り心地は、冷たくも暑くもなく上々だ。 家から駅まで自転車で約5分。 ふた駅先で降りてから名山までは、徒歩で約10分。 我ながら恵まれた環境だと思う。 名山の門をくぐり、予め通知されていた1のAの教室に向かった。 教室に着くと、並んだ机にそれぞれ名札が貼られていた。 自分の席は教室のほぼ中央で、取り立てて荷物もないので、席に座ってぼんやり辺りを観察した。 ウチの中学から名山に受かったのは、自分の他に男子が2人。 面識はあっても、さして仲が良かったわけじゃない。 それにどうやらこのクラスにはいないみたいだし。 ゼロからのスタートも悪くないよね。 のんびり構えながら、遠慮がちにざわめく教室に身を置いていた。 やがて数分が過ぎた頃。 担任らしき教師がひょっこり顔を出し、廊下に集合をかけた。 出席順のまま男女一列に整列し、入学式へと体育館に向かった。 メインは自分達に他ならないとはいえ、退屈極まりない30分ほどの儀式が始まるのだった。
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