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「ねぇ、あれパパじゃない?」
娘の指差す先に、元夫がいた。
「あれ?楓、よかった、金貸してくれ」
「貴方に渡すお金なんてありません」
若気の至りって言葉で済ませられないくらい後悔した彼との結婚生活。
お金にルーズで嘘つきで仕事もまともにしなかった彼。見抜けなかった自分にも非はある。いや、見えないふりをしていたんだろう…付き合ってた時から腑に落ちない所は多々あった…『彼と』ではなくただ『結婚』がしたかった30手前のあの頃の私。
「戻れるなら全力で阻止するわ」
「ママ?」
右手の小さな手に引っ張られる。
「何でもないわ…ねぇ瑠菜、今夜の夕飯何が良い?」
「んーとね、カレーライス」
「了解。じゃあ、おばあちゃんちに陽斗迎えに行こう。あ、パパに会った事は…」
「内緒でしょ。わかってる、おばあちゃんもおじいちゃんもパパ嫌いだもんね」
口には出さなくともちょっとした表情の変化で子供はたくさんの事を察知する。
「…ゴメンね」
「なあに?」
「何でもないよ、行こう」
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