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「矮小な人間が独り、じたばたして変わる事態なんてものはな、始めから大した事ではないんだよ。」
ふて腐れたクラウンがエンジンの振動越しに語りかけてくる。
それは以前、「彼」が言ったことだった。
「彼」はユニークな人間だ。少なくとも僕の目から見れば、「彼」はそう映ったのだ。
ここで勘違いをしないでもらいたいのだが、ユニークと言っても「彼」は、別に面白い話を披露するわけでもなければ、
何か特別な特技を持っているわけでもない。
それは、ただ、なんとなくだ。
ただ、なんとなく僕には、「彼」が語る「矮小な人間」という器に収まる彼と、彼の話す人生論とも言うべき話がユニークでしかたなかったのだ。
突然、クラウンのエンジンが断末魔をあげた。
しゃがれた声だった。見ると、僕の左足はクラッチペダルから離れてしまっていた。
鉛みたい重くなった手をハンドルから離して、ようやくエンジンを切った。
ハンドルを強く握りしめすぎていたらしく、じっとりした汗が僕の手に握られている。
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