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「門番はどうしたんだ! 何の為の門番だ!!」
「今まであんな魔物いなかったぞ!? 何故、突然……」
「俺はこんな街、逃げさせてもらう。こんな物騒な街、まっぴらごめんだ。」
「家内を……誰か家内がどこに居るか知らないか……?」
大人達の話し合いは、本当に滅茶苦茶だった。誰が誰と話をしているのか、何を話しているのか、全くわからない。
魔物達が帰った後、私の家で集会が行われた。パパは部屋に帰れって怒ったけど、私は怖くて帰れなかった。
目を瞑ると、蘇るあの姿。あの声。あの匂い。
そのおぞましさから、ゾワリと肌が粟立つのが自分でもよく分かる。けど、何故か私は驚くほど冷静だった。
目の前で人が死んだのに。
恐ろしい魔物と出会ったのに。
パニック状態になってもおかしくないのに、私は何だか夢でも見ているかのように危機感が感じられない。
「リース。」
「……え?」
ぼんやりと大人達の口論を眺めていると、不意に勇者様がこちらを向いた。
「大丈夫かい? いや、大丈夫じゃないか……ショックだっただろう。」
哀れむような、悲しそうな表情。悲痛の色を強くする勇者様は、唇を噛み締める。
「大丈夫、私は平気だよ。だから勇者様、心配しないで。」
そんな表情の勇者様は見たくない。けど、私がそう言うと、勇者様はますます悲しそうな表情をした。
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