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ガタガタと体が震える。私の体が震えている。
いや、違う。震えているのは私だけじゃない、肩に手を乗せているパパも震えているんだ。
次の言葉が分かるから、震えているんだ。
「町長の下の娘、ミーナも確か十歳だ……」
ザワザワとガヤガヤと。耳障りな程騒がしかった部屋が、徐々に徐々に静かになった。
そしてこちらに向けられる目、目、目……
血走り、焦点が少しズレた目。恐怖と狂気が混ざり合った目。何も言わず、けど……言葉以上の意思が込められた視線が……
パパと私に集まった。
「町長。町長はいつも言っているよな。私は街の為になら何でもすると。」
「違う。違うんだ。そういう意味じゃない。」
獲物を前にした獣のような、ギラギラとした目。集団で狩りをするように数で囲み、パパへと少しずつにじりよる。
怖い。私の知っている大人達じゃない、人の闇が剥き出しになった大人達。
その大人達が、私達を追い詰めようとしている。私の大事な妹を、自分達の身代わりに奪い去ろうとしている。
まるで弱い者を数でいたぶるように。自分だけが助かろうと、卑しく浅ましく……けど本能に素直に。
「町長、あなたの娘を。」
「あなたの娘を。」
「この街の為に。」
「為に。」
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