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「違う! そんな……そんな事は……」
口を開いて反論しても。
拳を握って、見据えても。
「悪魔! お前のせいで……お前のせいで俺の嫁さんは……!!」
「お前さえ来なければ、こんな辛い夜を過ごさないで済んだんだ!」
お前のせいで。
おまえのせいで。
オマエノセイデ。
恨み、辛み、怒号のような負の想い。
押し潰されそうな想いの中で、勇者様の姿は……とても小さく見えた。
「何でお前はこの街に来たんだよ!」
「勇者の皮を被った死神め!」
ぐちゃぐちゃになってしまいそうな思考。滅茶苦茶になってしまった部屋。
違うよ。
敵は勇者様じゃないのに。
「…………っ。」
クルリと皆に背を向けて、勇者様は部屋を。
「ま、待って勇者様……」
追われるように。
「出ていけ!!」
出て行って、しまった。
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