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「ここが水の街ウィーダか……」
妹と一緒に門番さんとお話ししていた昼下がり、そんな声と共に勇者様はやってきた。
「門番、ご苦労様。俺は、魔王を倒す為の旅をしているアレクという者だ。中に入ってもいいかな?」
「は、はっ! 勇者殿がこの街に寄って頂けるなんて、私としても光栄です! ど、どうぞお入り下さい!!」
いつもはちょっと気難しい門番さんも、勇者様が来た時は本当に緊張してた。ビシッと敬礼のポーズで決めて、まるで銅像みたい。
けど、私も驚いた。パパから話だけは聞いていた勇者様が、目の前にいるんだもの。大きな剣を背中に背負って、大きなマントを体に羽織った勇者様は、本当に……格好いい!
「おや、お嬢ちゃん達はこの街の子かな? 俺の名前はアレク。君は?」
妹のミーナと一緒にボーっと眺めていたら、勇者様の方が私達に気付いてくれた。そして、私と同じ目線まで屈んでくれた。
「わ、私はリース! リース・マードック! こっちは妹のミーナって言うの。」
「そうか、リースとミーナって言うのか。よろしくな。」
そう言ってニッコリ笑うと、勇者様は私達の頭を優しく撫でてくれた。多分、私の顔は真っ赤だったんじゃないかな……
だって、私の隣で頭を撫でられていたミーナも、顔を真っ赤にして俯いていたんだから。
「ところで、この街の町長の家はどこにあるのか教えてくれないか?」
「はっ、町長の家でしたら、この娘達に聞けば分かります。二人は町長の娘ですから。」
勇者様の問い掛けに、門番さんは私達を手で示しながら答えた。そう、私達のパパは町長。この街で一番偉い人なんだから。
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